アウトサイダーに告ぐ |
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まえがき
ゼア・イズ・ア・ライト
ザット・ネヴァー・ゴーズ・アウト
コリン・ウィルソンは「アウトサイダー」という概念を発明した。日本語訳本の裏表紙の紹介文には「自己を自らの意志で社会の外側へ置く人間」と説明されているこの概念は、初見の人々には社会学的な用語と見られることもあるかもしれない。
だが、彼の著作を手に取って数ページ読み進めるだけで、この概念は極めて個人的かつ実存主義的な事柄を扱うために開発されたものだということがわかる。家も持たぬ二十代そこそこのイギリスの青年が開発したこの概念は、彼を一躍文壇の寵児へとなしえた。だが不幸なことに、その概念を彼と同じくらいの強度の熱意で引き継ごうという人間はついに、彼の生前には誕生しなかった。
引き継がれぬものが辿る道は忘却である。開発者が死んだ今、さらにこの向きは加速しつつある。だが、この「アウトサイダー」は朽ち果てさせるには惜しい概念である。より正確に言うと、彼が「アウトサイダー」を通して描いた一連の思想からはまだ搾り取れるものがある。
私は彼がその概念と同じ名を冠した評論「アウトサイダー」で成し得た比較と分析を私の立場においてもう一度やり直し、埋もれつつあるその功績を掘り起こすつもりでいる。また同時に、彼一人では力不足であった「アウトサイダー」概念の完成をも目論んでいることを宣言しておこう。彼の思想にはなんらかの失敗も存在することは明白である。それは私にこのような評論を書かせた衝動からも明らかであり、そしてなによりも彼自身の言葉がそれを裏付けている。しかし、そのことに関して彼にはもちろん責任はない。なぜなら同じく彼自身のその言葉が語るとおり、初めて「アウトサイダー」という名を与えることによってこの問題をしっかと捉えた開発者一人で太刀打ちするには、やはりこの問題は大きすぎたからである。この事実はもちろん私自身へも帰ってくるかもしれぬが、彼の言うその言葉を今一度ここに記載して、私もまずは刀を振るってみることとしよう。
「これまでアウトサイダーの問題へ立ち向かって勝利した人間はいない。すべての人間は敗北者なのだ」
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