言霊マジカル 第3話 |
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ある日国民調査という名目で届いた、
あなたの座右の銘を教えて下さいという手紙に、
適当な言葉を座右の銘として書いた僕。
その日を境に、僕の人生は飛んでもない方向へと進んで行くのであった!
第3話 遠藤現る!
男女が付き合うとはなんだろう。
僕は他の草食系男子の例に漏れず、女子とお付き合いというものをした事がない。
関はどうだろうか。
少なくとも、小学校から高校までの間、関が誰かと付き合ったという話は聞いた事がない。最近の若者は恋愛離れしているといった事をニュースか何かで見た事があるけれど、どうやら本当らしい。この国の先行きが心配である。
で、付き合うとはなんだろう。
口約束だし、明確な契約書を交わした訳ではないのに、いざ付き合うとなると周りも含めて生活は激変する。
SNSで授業中でも常に連絡を取り合ったり、休みの日は一緒にデートしたりするのが通常だろう。
まあ、僕は女子と付き合った経験がないから完全に想像でしかないのだけれど。
チューとかは付き合ってからどれ位でするんだろう。
……三ヶ月くらい?
そういえば、関から聞いたが、近い内に遠藤がお見舞いに来るらしい。
以前までだったら絶対に来なかった人物だけに、少し楽しみである。関から色々遠藤の話を聞いているが、実際に新生遠藤と会うのは初めてだからな。
関は、遠藤からの告白を保留にしているらしい。わざわざ僕に、告白された事を相談しに来るくらいだから、関は関で悩んでいるのは確かなのだろう。関も僕と一緒で恋愛初心者だろうからな。こういう場合は応援してあげた方がいいのだろうか。
病室のドアがノックされた。
担当の看護師さんだった。
「星崎くん、調子はいかが?」
「病院食に飽きましたね。それと、僕はあとどれ位で歩けるようになりますか?」
「大雑把に言うと、再来年までには歩けるようにと思うよ」
「大雑把過ぎる!」
「定年までには元気に走り回れるんじゃないかな」
「なぜより一層大雑把に!?」
うん。
これだけ元気に突っ込めるなら、近い内に歩けるようになるんじゃなかろうか。幸いな事に骨折とかはしていないようだし。
「トラックに轢かれるなんて、念能力もないのに無理は駄目よ、星崎くん」
「いや確かに念能力はないですけども」
「体内チャクラを一気に放出すればこれ程の大怪我を負う事はなかったってばよ」
「世界観がバラバラ過ぎる!」
なんだこの看護師。情緒不安定なんじゃなかろうか。
大怪我している患者に対して激しい突っ込みを強いる、看護師のゴミめ……。
いちいち反応してしまう僕も悪いんだけど。
「あ、ところでホッシー」
「ホッシー!?」
「今日は君にお客さんが来ているのだった。ずっと部屋の前で待機してもらっていたのだった」
「先に言って下さいよ」
「この来客者が後にホッシーの人生を左右する程の出来事を巻き起こす事になるとは、この時はまだ誰も予想していなかった」
「先に言うな!」
いや。
たぶんそんな大層な展開にはならないんだろうけど。
トラックにぶっ飛ばされただけで相当アレだし。
「……もう入っていいですかね?」
聞き慣れない、男の声だった。
「おー、すまぬ来客者よ。このように日常会話は平気なくらいに回復しているから、遠慮なく入れ」
僕の日常会話が漫才みたいな扱いになっている。
看護師に導かれて病室に入ってきたのは、遠藤だった。
予想はしてたけどな。
というか、今日来るって言ってたし。
「毎日顔を合わせてはいるけれど、こうして話すのは初めてかな? こんにちは星崎くん。これが生まれ変わった僕だよ。早速だけど本題に入ろう。おっと、その前に看護師さんには退席してもらいます。これは僕と星崎くんの、前世より続く因縁の話なんです」
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