言霊マジカル 第２話 |
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ある日国民調査という名目で届いた、
あなたの座右の銘を教えて下さいという手紙に、
適当な言葉を座右の銘として書いた僕。
その日を境に、僕の人生は飛んでもない方向へと進んで行くのであった！
第2話 遠藤くん
僕が登校中にトラックに跳ねられたのは、どうやら二週間ほど前の話だったらしい。
医師から聞いた話だと、万に一度も成功するかわからないような手術を行い、奇跡に奇跡が重なって、僕は蘇生したようだ。
僕は身体のどこにも障害を残す事もなく、むしろ完治した後は以前より丈夫になるのではという話だった。
サイヤ人かよ。
とにかく、なんとか命を落とす事はなかったが、僕は数ヶ月後に大学入試を控えた受験生である。一刻も早く学業復帰したいところだが、医師の話だと、完治したとしても相当長いスパンでのリハビリ等を経て、ようやく普段通りの生活に戻る事が出来るらしい。
タダでさえ二週間も勉強が遅れている中で、これは非常にマズイ。
僕が今後の人生について頭を抱えていると、病室のドアをノックする音が聞こえてきた。
「どうぞー」
僕は全身に包帯やらギプスやらでミイラ男みたいな状態なので、出られない。
「……うわあ」
失礼しますと言って病室に入って来た関は、僕の姿を見るなりそう言った。
関和美。
僕がトラックに跳ねられた時に現場にいた同級生。
というか一緒に登校していた最中に、トラックが突っ込んで来たんだけど。
なんでお前だけ無傷なんだよ。
「いやあ、運が悪かったわね。星崎くん」
「運転手が悪いんだけどな」
「でもあれだけ派手に跳ねられて生きているなんて、星崎くんの生命力には驚かされたわ。絶対死んだと思ったもの」
「絶対死んだと思われてたのか」
「全身血だらけで脳漿ぶちまけていたし」
「まじで！？」
よく再生出来たなここの医師！
というか、絶対に嘘だろそれ。
「冗談よ」
関はクスクスと笑いながら言った。
「思ったほど血は出ていなかったわ」
「脳漿はぶちまけたのかよ！」
まじでか！
本当にすげーな。
「と、冗談はここまでにして、本当に無事でよかったわ星崎くん。退院祝いは、私の大学合格報告でいいかしら」
「やめろ。僕も受けるわ。僕も受かるわ」
受験までには退院できるし、よく考えたら勉強なんて病室でも出来るしな。
というか、よく考えたらこれはチャンスでもある。この環境なら余計な事は一切考えずに、勉強にのみ打ち込めるじゃないか。ちょっと、いやだいぶというかめちゃくちゃ身体は痛いけれど、勉強に集中すれば痛みも多少紛らわせるかもしれないし。
「ところで星崎くん。今日は私、あなたに相談があって、ついでにお見舞いに来たのよ」
「お見舞いがついでなんだ」
「そうよ。ついでだから、お見舞い品は、二週間分の授業のノートくらいしかないわ」
……優しい。
ちょっと涙が出そうになったから、僕は無理やり話題を戻した。
「で、相談したい事ってなんだよ。勉強の事以外なら相談に乗るぞ」
勉強の事はこっちが逆に相談したいくらいだし。
「同じクラスにいる遠藤昌也えんどう まさや君、知ってるわよね？」
「遠藤？」
遠藤と言えば、クラスに1人はいるなってタイプの人間である。暗くて、誰ともコミュニケーションを取りたがらない。少なくとも僕は、遠藤が他の誰かと話しているのを見た事はない。
その遠藤がどうしたというのだろうか。
「遠藤君、星崎くんが事故した次の日くらいから、急に人が変わったようにクラスでも目立ち出して、授業中でもバンバン手を挙げて発言するようになったのよ」
「へえ、遠藤くんがねえ。まあでも、いい事なんじゃねえの？」
「そうね、明るくなっただけなら、まあいい事なんでしょうけれども」
何か奥歯にものが詰まったような言い方だ。
他にもなにかあるのだろうか。
「遠藤くん、急に人が変わったみたいに積極的になって、男子だけじゃなくて、女子にもかなり話しかけるようになったのね。最初はみんな戸惑っていたんだけれども、彼、結構ボキャブラリーが豊富で、話も面白いからあっという間に人気が出たのよ」
「へえー」
そうなんだ。
僕なんかは遠藤と一度も話した事がないからわからないけど、そういえば遠藤はいつも本を読んでいた気がする。という事は色々な知識はあるだろうから、伝え方次第では確かに人気が出るかもしれない。
「で、何が問題なんだ？ 聞く限りだと特に問題はなさそうだけど。目立ちたがりに変身したって言っても、奇声を発するとか突然踊り出すとかではないんだろ？」
「まさか。星崎くんじゃあるまいし」
「僕がいつ踊りながら奇声をあげた！？」
「授業や生活態度は至って真面目よ。ただ、ちょっと積極的になり過ぎたというか、ちょっと困った事になっていて……」
「なんだよ」
関は少し恥ずかしそうに、僕から目を離した。
「その……告白を、されました」
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